共働きの時代と郊外――自分の経験から
引越し先を決めるのが大変だった話
彼女と一緒に住む話をすすめていたときに思った話。
自分の勤め先の本部は茨城県つくば市にある。
今は東京事務所の方の配属になっているものの、当然、将来的には再度つくば勤務になる可能性は高い。
勤務先の機関は、数十年前の筑波学園研究都市建設に際して真っ先に移転した。
対して、彼女の勤め先は田園都市線沿い。数年前に山手線沿いから移転したらしい。
さて、インターネットの同棲のうんたらみたいなサイトを見ると、
だいたい「両者の勤務地から中間地点を選ぶと良いでしょう」みたいなことを書いてある。
まあ、もっともだ。
さて、勤務先がお互い郊外の両者。
東京の地理に詳しい方はすでにこの時点でおわかりだろう。
つくばは東京の北東にあり(当然アクセス路線は東京から北東に伸びるつくばエクスプレスになる)、
田園都市線は東京の南西に伸びる路線である。
東京を挟んで真向かいなのである。
もちろん、両者のことを考えれば東京の真ん中あたりに住むのが一番いいのだと思う。
しかし、山手線の中のタワマンを借りるほどのお金はない。
かといって、安さを求めてどちらかの郊外に寄ってしまうと、片方の通勤はめちゃめちゃ大変になってしまう。
というところで、まず場所が決められない、というところで行き詰まってしまった。
結局、北千住からつくばエクスプレスにアクセスしやすく、
半蔵門線・田園都市線に直通する東武スカイツリー沿線という最初は思ってもみなかったところに決まった。
直通とはいえ、彼女は約1時間通勤になってしまいやや不満げだったが、
家賃の予算、間取り、綺麗、猫が飼える(!)という条件を満たす物件になると他になかった。
その他多少のトラブルはあったものの、
そんなこんなで、猫はまだいないけど、とりあえず新生活を始める事ができた。
郊外勤務の思わぬ罠
近年というより随分前から東京一極集中が批判されている。
その一方で、大学キャンパスやマンションを中心に都心回帰の動きが進んでいるとも言われる。
今までも、自分の勤務先が郊外にあることの不平不満はあったけれども、
全体的には生活費安くなるし通勤ラッシュに巻き込まれないことはメリットだと思っていた。
もし、都心勤務の人と一緒に住むことになっても、都心と郊外の中間地点あたりに住めばいいかなーと、薄々思っていた。
だけれども、さすがに東京の反対側に勤務している人と一緒に住むことになるとは思わなかった。
これは郊外勤務の思わぬ罠だった。
かつて、高度経済成長期やバブル期に会社や機関の郊外移転の旗振りをした人は、
専業主婦モデルの家族を想定していたのだと思う。それで、理想的な職住近接都市を目指したのだろう。
しかし、言うまでもなく時代は共働き。
両者の通勤の条件が揃った郊外の住居というのは、専業主婦モデルの家庭よりも一層難しい。
ましてや、勤務地がお互い郊外だと更に難しくなる。
うまく武蔵野線や南武線あたりでお互い通勤できたらいいだろうが、東京の環状鉄道は少ないのでうまくいかないケースが多いだろう。*1
実際、自分のつくばの同僚も旦那さんの勤務地が所沢だか川越だかで、住む場所にかなり苦労していた。
職場が郊外にあれば、職住近接モデルの都市が出来るという絵に描いた餅は今の時代通用しないだろうな、ということが自分の経験から身に沁みてわかってきた。
こういう働き方の変化の結果として、郊外の衰退と都心回帰という流れは当然だろう。
行政は地方創生を掲げて、地方移転を掲げている。実際、KADOKAWAは所沢に移転するそうだ。
だけれども、面積が必要な産業を除けば、現代の働き方に合わない郊外移転する企業はますます避けられていくのかな、という気はする。
結果として、職も住も都心に回帰していく動きが強まるだろう。
ベッドタウンから抜け出せず、職住近接都市の夢も潰えたその先、郊外はゆっくりと衰退していくしかないんだろうか。それはそれで寂しい気もする。